本好きプチFIREのゆるいブログ

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夜と霧 新版 ヴィクトール・E・フランクル/著 みすず書房 レビュー(1)

 アウシュビッツ収容所に入れられた著者の経験を記したものとなっており、世界的なベストセラーの一冊に挙げられる本ですね。読書していると、よく参考文献に挙がっており、以前から気になっていた本です(遅まきながら、漸く読みました)。

 収容所で亡くなった大半はユダヤ人であり、その外にロマ(ジプシー)、同性愛者、障碍者等もいるようです。トータルその数は約100万人。収容所に入れらた人の10人中9人は亡くなったと言われております。

 極寒(真冬は零下20度にもなるとのこと)、過酷な労働、非衛生的な住居、薄い衣服、粗末な食事の中、生き延びた人もいる訳です。筆者もその一人ですが、本書の最後の方で、収容所の生活に対して、「どうして耐え忍ぶことができたのか、われながらさっぱりわからないのだ」と記されています。

 経過を見れば、極限状態では感情を失い、精神的に退行していき、例えば、収容所の仲間が死んでいく様に対しても無反応になっていったようです。「人間は何事にも慣れる存在だ」というドストエフスキーの言葉が本書にも記載されているのですが、そういうことなのかと思わざるを得ない心境です。

 多分、無自覚でそのようになっていったと思うのですが、それにしても人間はそのような劣悪環境にも耐えることができるというのは、ちょっとでは信じられないところです。が、この本を読んで一番最初に感じたのはその点でした。

 もっとも、やはり未来に希望を持てない人は、自ら死を選ぶか、病に倒れていったようです。そのような環境の中に身をおいたことがないので分からないのですが、人間は慣れる生き物ということですから、生き延びた人の中でも、未来に希望を持てないものの、その環境に慣れた状態のままだったような人が、もしかしたらいるのかもしれません。

 (続きます)