本好きプチFIREのゆるいブログ

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夜と霧 新版 ヴィクトール・E・フランクル/著 みすず書房 レビュー(2)

 収容所が解放された時、歓喜の歓声が起こることはなかったというのは、意外というか、成程と思いました。多分、テレビや映画などでは、捕虜が開放されような場面では、大歓声が湧き起こると思うのですが、収容所ではほとんどなかったとのことです。それほど、精神が追い詰められ、なかなか現実のことと受け入れることがなかったらしいです。本書では、極度の離人症と記載されていました。

 一方、身体は正直なようで、数日は貪り食べたようです。また、自分の置かれていた境遇を喋り続けたようです。今まで出来ていなかったことを取り返す行為に出ていたのでしょう。

 現代では、精神的な抑圧を受けた場合、その後のケアの大切さを言われていますが、解放後の人々こそ正しくそうだったでしょう。家に帰っても待っている人がいない。近所の住民はみなよそよそしく接してくる。帰宅しても、もう昔の生活に戻れる訳ではない。その失望感は想像を絶するものがあります。
 本書では、「収容所にいたすべての人びとは、わたしたちが苦しんだことを帳消しするような幸せはこの世にはないことを知っていたし、そんなことをこもごもに言い合ったものだ」
 「少なからぬ数の開放された人びとが、新たに手に入れた自由のなかで運命から手渡された失意は、のりこえることがきわめて困難な体験」とあり、生きてなお苦しみが続くのは、言葉に尽くしがたいと思いました。