本好きプチFIREのゆるいブログ

本とお金、そして東芝ブレイブルーパス東京を中心としたラグビーのブログをはじめてみました

幸せなひとりぼっち フレドリック・パックマン/著 早川書房 レビュー(2)

 筆者の描写ですが、例えば、冒頭、iPadを購入する場面です。
 オーヴェはiPadが何かよく分かりません。そこで店員に説明を求めるのですが、店員の説明が全く分からず、聞き返します。
 その時の表情を筆者は、「オーヴェは文章を逆さから言われたような顔で販売員を見て」と、全く分からない様をこのように例えで書いています。
 また、野良猫が家の近くにいるので、大声で「あっちへいけ」と叫ぶのですが、その時の表現を「家々のあいだを怒れるゴムボールのように跳ねてこだまがするほどの大声で」と例えて書いています。
 万事、この調子で書いていますので、笑みがこぼれてくるのです。

 さて、オーヴェの過去、そして現在の様子だけ見てみると、どこに幸せがあるのか分からないのですが、ソーニャとのその後40年ほどに及ぶ結婚生活は満ち足りているようです。また、ソーニャの死後、つまりこの物語が始まってからの出来事も、頑固さゆえにアチコチでイザコザを起こすものの、憎めない性格を感じた人たちからは信頼されいてた様子がうかがえます。

 そんなオーヴェをソーニャは心から愛していました。勿論、オーヴェもソーニャを心から愛していました。スウェーデンは北国で雪深いのですが、オーヴェは墓参りを欠かしません。頑固で無口なオーヴェが、墓石に話しかけます。勿論、応えはありませんが。
 ある時、野良猫をひょんなことから飼うことになり、その猫と一緒にソーニャの墓参りに行った時の下りが秀逸です。

 (続きます)