幸せなひとりぼっち フレドリック・パックマン/著 早川書房 レビュー(3)
猫と一緒にソーニャの墓参りに行った時の下りです。
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墓石も猫も無言だった。オーヴェはしばし自分の靴を見つめた。ぶつぶつこぼした。雪にひざをついて、墓石の雪をさらにはらった。上にそっと片手をおいた。
「寂しいじゃないか」ささやき声で言った。オーヴェの目の端に一瞬光るものがあらわれた。すると、何やらやわらかなものが腕にふれた。その正体が猫で、オーヴェの手のひらに小さな頭をのせてきたのだと理解するのに、一瞬かかった。
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墓石にわざわざ手をおいて、そっとつぶやく。「寂しいじゃないか」と。そして、猫がその心を慰めるかのように、オーヴェの手のひらにその小さな頭をのせる。
読んでいて、じーんとくるものがありますね。
私はこのあたりから読むスピードがかなり加速していきました。
あとがきでは「10ページ読んでみてほしい」と記載されています。私は50ページくらいまでは、「まぁ、どうせ読む本がないし、読んでいくか」という調子だったのですが、少しずつペースが上がり、猫と一緒に墓参りをするこのシーンから加速していき、最終章では不覚にも涙してしまいました。しかし、エンディングでは、また新しい未来が続く、素晴らしい終わり方になっています。
この書評の(1)で、「なんだかよくわからないけれど、ジワジワくる、すごくいい本です」と紹介しましたが、その通りの、お薦めの一冊ですね。